ONE PIECE | ナノ


「好き」の意味

天気良好。気分……最悪。なんなんだこの不釣り合いな感じは。いやそんなことに文句言ってもどうしようもないけどね。
「なんなのかしら」
「溜め息なんて吐いてどうしたの?またルフィのこと?」
「また」って何よ「また」って。しょうがないじゃないの。あたしが好き好んでトラブル起こしてる訳じゃないわよ。原因は全部アイツなんだから。
「べーつに。たいしたことじゃないわよ」
「たいしたことじゃなくてナミがそんなになるかしら?」
ふふふ、と何故か楽しげに笑うロビンを睨む。賢い人って本当イヤね。ロビンは賢いっていうか聡明っていうか。察しがいいって言った方がいいと思うけど。
「アイツが、ビビに会いたいなってさ。呟いてただけよ」
「あら、ビビってあの王女様でしょ?今更そんな心配するようなことあるの?」
むすっとして、醜いただの嫉妬。そう一言返せばロビンはさもおかしそうにくすくすと笑う。
「ルフィのことよ。きっとただの気紛れだわ。大方、昨日の新聞にアラバスタが取り上げられていたからだと思うけれどね」
そういえば、昨日の新聞に確かに載っていた。内容としてはただの広告にすぎないけれど、あの小さかった国は新聞に載るほどにはきちんと成長しているのだ。ビビやあの国王、家臣、みんなで立て直したんだろうか。あれから二年も経てば、国も、そしてビビも変わる。あの頃のままのビビでいて欲しいだなんて思ってしまうのはやっぱりビビを仲間に引き入れたかった名残なのか。
「でもルフィが人に会いたいだなんて言うの珍しいじゃない。いっつも食べ物のことばっかなのに」
「ルフィだってそう思うときぐらいあるんじゃない?だって一度は仲間にしたいってみんなが思ったような人なんでしょ」
そう。それだけあの子はみんなに認められていたわ。私だって大好きよ。また会いたいとも思ってる。あの場で「仲間になれ」って強引に引き込んでしまえば良かったのにと何度思ったことか。
初めて、船員に年の近い女の子が入ってきて、素直に嬉しかった。お姉さんになれた気がした。でもビビがだんだん周りと打ち解けていくうちに、当時付き合ってさえいなかったルフィを取られるんじゃないかって怖くなった。ビビからしてみれば、そんな恋だの何だの言ってる場合じゃなかったのに。不謹慎にもほどがあるとは思ったけど、それでも嫉妬した。ビビの立ち位置ならルフィに女の子として接して貰えるのかなって。乱暴な私なんかじゃ、今更そんなことして貰っても「嬉しい」の言葉1つも言えない。自分でこう振る舞った癖に。今更羨ましいだなんて、そんなの狡い。
「付き合ってるのだから、そんな心配しなくていいと思うわよ?」
ロビンは小首を傾げてそう言ってくれるが、そんなことない。あのコロコロ変わるルフィだ。いつ私から目線を移してしまっても……不思議じゃない。
「私だって女の子らしくなりたかったのよ。ビビみたいな、だなんて言ったらあれだけど、可愛いって言って貰えるような、そんな子になりたい」
「サンジが聞いたらルフィを叱りに行きそうね。ナミは今でも十分よ。可愛いわ」
そうよ。ルフィじゃなきゃこんなこと思わない。サンジくんみたいな……女を大切に、一番に考えてくれるようなそんな紳士だったなら、どんなに楽か。まぁサンジくんは少し行き過ぎな気もしなくはないけど。
こんなに男相手に苦労したことなんか一度もなかった。だから分からない。どうしたらルフィが私を見てくれて、私から目を離さないでいてくれるのか。
付き合っても尚不安だった。
「アンタのこと好きよ」だなんて酔った勢いで言ってしまって。ルフィはなんだか嬉しそうな、優しげな笑顔で「そっか。俺もだぞ」だなんて返してきやがって。「好き」の意味がお互い合っているのかあやふやに分からないまま二年も離れて。あの美しい蛇姫と一緒にいたと言うし、不安も割り増し。正直、付き合っていると思っているのも私だけな気がしてならない。
「ロビンはそう言ってくれるけど、きっと当の本人は何も思ってないわよ。そもそもアイツに女がどうのこうのだとかそういう興味があるかさえ怪しいもんだわ」
「あるわよ。ルフィだって仮にも男の子なんだから。そんなに心配なら色仕掛けでもしてみればいいんじゃない?あなた得意でしょう」
「イヤよ。別に苦じゃないけど、ルフィ相手にやったって空回るに決まってるもの」
「そうかしら。じゃあ後ろから不意打ちで抱きついてみたら?気持ちを確かめられるかは定かではないにしろ、好きな人に抱きつかれて嫌な気持ちにはならないわ」

今日の不寝番はルフィ。狙ったかのようなこのチャンスに少なからずロビンの計らいが伺えてしまう。ありがたい。さすがロビン。
目的のルフィを見つけると、周りを確認してから思いっきりルフィの背中に飛び込んだ。
べ、別にロビンのアドバイスを鵜呑みにしたわけじゃないから。
そんな言い訳を脳内で繰り返すと、ルフィは少し驚いたようで振り返ろうとする。身じろぎするルフィになんだか動いて欲しくなくて更に力を加える。
「……ナミ?どうした急に。眠れねぇのか?」
「ううん。別にそういう訳じゃないけど」
なんて言えばいいのよ。一緒にいたくて、だなんて性に合わないというのに、それしか理由が思いつかなくて黙ってしまう。
「ま、いいや」
言いたくないなら言わないでもいい。そんな気遣いが感じられて、ルフィなのにルフィじゃないみたいに思えた。でも、そんなさりげない優しさは会った頃から変わらない。ルフィはいつだってそう。
「でもちょっと苦しいから腕緩めてくんねぇか?」
おかしそうにししし、と笑いながら言うルフィにやけに恥ずかしさを覚えて顔が熱くなる。
「ご、ごめん」
「なんだぁ?今日はやけにしおらしいじゃねぇか。なんかあったのか?体調悪いならチョッパー起こしてくるぞ?」
そうだった。コイツ、ゴムだ。
首だけ伸ばして顔を覗きこまれる。顔が近い。いくら真夜中で、暗くてほとんど見えなくても、こんな顔をもし見られたら。また急に恥ずかしくなって顔を背ける。冷静な声を保とうと努力したものの声が震える。
「何でも、ないわよ」
「変なのー!」
伸ばした首を戻したルフィは首を戻した反動でか、私の腕の中から出ていってしまう。ぬくもりが惜しいと物欲しそうに手を動かした自分に少し恥ずかしくなる。
「なぁ、俺なんかお前にしたか?」
俺鈍感だから分かんねぇんだけどさ、と笑うルフィに慌てて首を振って否定する。
違うのよ。私が勝手に考え込んで、アンタに迷惑かけてるだけ。アンタは悪くないし、なにもしてないわ。
「じゃあお前なんなんだよ」
「……ルフィはさ、またビビに会いたい?」
意表をつかれたみたいで一瞬固まる。
「あぁ、そうだな。また会いてぇな。それが何か関係あんのか?」
「ビビに、会いたい?」
「んあ?どういうことだ?別にビビに限ったことじゃねぇぞ?」
首を傾げて尋ねてくるルフィに少し安心した。そうよ。ビビは仲間なの。そういう意味合いで言ったわけじゃなかったのよ。考えすぎたの、ナミ。
「なんでもない。ねぇ、ルフィは私のこと……いやなんでもないわ」
「なんだよー!言えよ、気になんだろ!」
言葉にして確かめるだなんてできるわけなかった。というより必要ないと思った。
「なんでもないって言ってんでしょ!」
バシ、とルフィの肩をはたく。
「あだっ」
ゴムなんだからこんなの痛くも痒くもないくせに。何すんだ、って頬を膨らませる仕草にやっぱりルフィはルフィだと思う。
「好き」の意味なんて、コイツに尋ねる方が馬鹿だったわ。私はそう小さく呟くと、またルフィの肩を軽くはたいた。

…あとがき…
やっと念願のルナミを書けました!なんか達成感。基本雑食の管理人ですが、本命はルナミとゾロロビです。大好きです。

題名はこちらのサイト様から
恋したくなるお題

更新(27/02/25)


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